PT論は私の好きな分野の話であり、PT論を始めた時から「これは長くなるなぁ」と想像していたのですが、今回のように長々とお休みしていたら一体いつ書き終わるのやら……。
「スキルやステータスを高くして火力アップしてあればOK」「攻撃だけやってればOK」という風に安易に捉えるのではなく、PTそのものの品質を司る司令塔としてのアタッカーというものを考えてみましょう。
アタッカーを考える場合、アタッカーとは何なのか?アタッカーの負うべき役割は何なのか?を充分に理解する必要があります。
一般に捉えられているアタッカーのイメージは、火力に特化した攻撃屋というイメージであり、ややもすると攻撃要員としての責務だけを負う者と捉えられていることが大変多いのが現状です。
しかしこれは大きな間違いです。
「火力に特化した攻撃専門」という表現は確かに間違いではありませんが、本当にアタッカーを理解するには、「火力に特化した攻撃専門」という表現の先に存在する物を理解しなければならないのです。
■アタッカーの役割り
PTにはタンクやヒーラーなど様々な役割り(ポジション)があります。
タンクなどの特定の役割り以外の前衛は全てアタッカーに分類されると表現しても間違いではありません。
しかし、職業軍人ならぬ職業アタッカー、自らがアタッカーを志し、優れたアタッカー足ろうとする人も存在し、そういう人に対して「特定の役割りを担当してないからアタッカー」という表現はあまりにも失礼であると言わざるをえません。
1)前衛の攻撃担当
PTに限らず狩りというのはMOBを倒すことであり、それはMOBのHPを削っていく作業であると言えます。
PTに置いては、タンクならタゲの確保、ヒーラーなら傷ついたメンバーの治癒など、特定の役割りを担っており、状況に応じて本来の最終目的である「HPを削っていく」という作業を後回しにすることになります。
そこで、この「HPを削る」という責務を専門に負うのがアタッカーとなります。
2)PTのレーダー
戦闘中、PTの後方から新たなMOBが近寄ってくるかもしれません。
複数のMOBを同時に相手している場合、タンクの善戦空しく一体のMOBがタンクから離れ、後衛へとタゲがハネるかもしれません。
一般に後衛は防御力が弱く、MOBの攻撃に晒されることを未然に防ぐことが大切なのですが、後衛が襲われた(襲われそうな)時にすぐにアクションを起こす、常に周りに気を張り巡らせておく、PTのレーダー役もアタッカーの仕事です。
3)PT戦闘中の司令塔
一般にはタンクやヒーラーなどのPT必須の役割りを請け負う人は、メンバーの中心的人物が担うことが多く、そういった方がPTの司令塔も担当することが多々あります。
しかし、タンクは複数のMOBを順番に殴ってタゲ確保する作業に追われますし、ヒーラーは詠唱中チャットが不可能であり、ヒール先の切り替えやヒール発動に0.1秒の勝負をしていることもあります。
「後ろからMOB来てるぞ!」「みんな、右のMOBを集中攻撃して!」など、戦闘中の指示をチャットで行う必要があるMMORPGでは、チャットを行う余裕というものが大切になります。
基本的には「ただ殴るだけ」の作業で済むアタッカーは、戦闘中に指示を出す役割りに最も適しているポジションでもあり、チャットのために少々手を休めても大きな問題にはならないアタッカーこそがPT戦闘中の司令塔を担うべきなのです。
■アタッカーの行動
役割りが分かったところで、アタッカーとしてどのように行動すれば良いのか具体的にみていきましょう。
攻撃担当だからと言って、MOBをひたすら殴っているだけでは充分な仕事をこなしていると言えないことは、上記の役割りで述べました。
1)自分の特性に合った位置を確保しよう
前回のPT論「
タンクについて考える」で、タンクは「ヒーラーから視認しやすい位置を取るべき」と書きましたので、アタッカーはそのタンクの立つ場所以外ということになります。

簡単に図で示してあるように、アタッカーの立てる場所というのは様々にあり、どこにでも立てるわけですが、「どこに立つか?」は自分の特性を考えてみると良いでしょう。
○Aの場合
タンクの横に立つ比較的スタンダードな立ち位置で、何となくアタッカーをしている場合、この位置に立っていることが多いと思います。
この位置はタンクの記事でも書いたように、後衛(ヒーラー)から視認されやすくヒールを受けやすい位置です。
防御が弱く迅速なヒールが必要なアタッカー、火力が強くタゲを奪ってしまいやすいアタッカーなどはこの位置に立つと、ヒーラーの負担を低減し、自分の生存率を高めることになります。
○Bの場合
Bの位置と後衛の位置を直線で結んでみて下さい、後衛との間に障害物がないことから、いち早く後衛の救援に走れることが分かると思います。
Bの反対側、Aの近くの位置だと、Aが邪魔になりますね。
複数のMOBを相手していて、後衛にMOBのタゲがハネた場合や、後方から新たなMOBが現れたりして、後衛が襲われた時、いち早く駆けつけてタゲを奪うのに適した位置だと言えます。
空振りの少ないDEXが高めのアタッカーに向いた位置です。
○Cの場合
ヒーラーから見るとMOBの影になり、視認性が悪く、後衛の救援に向かうにもMOBやメンバーが邪魔になり、すぐに行動することが難しい位置です。
しかし「ここは最悪の位置取り」というわけではありません。
真っ直ぐに後衛を視界に入れ、ほとんどのPTメンバーを視界に入れているのは、この位置のアタッカーであることに注目して下さい。
アタッカーの役割りとして「PTの司令塔」を紹介しましたが、この位置こそ司令塔として動くアタッカーの指定席でもあるのです。
ただし、迅速なヒールを受けにくいことや、いざ後衛を救助しようとしてもすぐに駆けつけることが難しいことから、回避の高いアタッカー、プレイヤー(中の人)の腕が良いことが求められる大変難しい位置取りでもあります。
以上、簡単に説明しましたが、「他の人と重なって立ってはいけない」ということは広く知れ渡っているものの、案外アタッカーの位置取りはみんな軽視し勝ちです。
しかしタゲが漏れ後衛へと向かうMOBを捕まえるスイーパー役、PTに忍び寄る新たなMOBの動向を見張るレーダー役、PTに的確に迅速に指示を出す司令塔を担うべきであるアタッカーもまた、その位置取りはPT全体の安全性を確保する上で重要な要素なのです。
そして、ヒールの受けやすさ、後衛救援への向かい易さなど、自分の防御力や命中率の高さといったキャラの性質と、自分の負っている役割りを充分に考えて、位置取りする必要があります。
また、これはアタッカーに限った話ではありませんが、位置取りというのは決定したら終わりではありません。
タゲを取ってしまった場合、HPが削られてしまった場合、新たなMOBが加わって来そうな場合、様々に刻々と移り変わる戦況によって、この位置取りをこまめに調整していく繊細さも大切なことです。
2)チョロチョロ動け
前回のPT論「
タンクについて考える」で、タンクは「チョロチョロ動かない」と書きましたが、アタッカーは逆に動きまくらなくてはなりません。
戦闘中新たなMOBが現れ、後衛を襲ったとします。
当然後衛の救援に向かわなければなりませんが、ここでタンクが救援に走ることは得策ではありません。(詳しくは前回の記事を参照)
この時こそアタッカーが救援に向かい、見事タゲを奪えたらタンクに引き渡すべく、タンクのいる場所まで誘導してやる必要があります。
また、複数のMOBを相手している場合、司令塔役の「右のMOBから集中攻撃!」などの指示に沿って、迅速に行動する必要もあります。
ただ絶大な火力に溺れ、ひたすら殴り続けるだけでなく、軽やかなフットワークこそがアタッカーに求められるファクターです。
■アタッカーの考え方
アタッカーとしての役割りを担当する際、常に頭に置いておきたい考え方を考えてみましょう。
基本的な「火力を上げ、アタッカーとしてHPを削りまくる」という事以外に、何が必要になるのでしょう。
1)回避を高く自分で自分を守る
PT中、ヒーラーのヒールは主にタンクに向けられています。
タンクにMOBのタゲが集中していることが大前提であり、ヒーラーもそのつもりで行動しており、アタッカーが殴られることはある意味アクシデントと捉えておく必要があります。
もちろん優れたヒーラーならば、MOBのタゲが移ったことを察知し、アタッカーが殴られる前にヒール先を切り替えてしまう人もいますが、安定してそれを行えるだけの腕を持ったヒーラーは大変稀です。
また、絶大な火力こそアタッカーの本懐であり、その為に防御力をある程度犠牲にしているのもアタッカーの特性であって、それがアタッカーの誇りでもありましょう。
「迅速なヒールを期待しない」というのはアタッカーの基本的な思想として持っておくべきで、回避を高くし「私へのヒールは後回しでも良いよ」というスタンスは好都合です。
また、回避を高くするAGIは手数も増え、絶大なダメージを数多く入れるという意味でも大切なことです。
2)攻撃力は重要ではない
「アタッカー=火力」と考えている人が実に多いものです。
それは確かに間違いではありませんが、もっと大切なことがあるのは、ここまでの記事でご理解頂けたことと思います。
他の誰よりも高いダメージ数を叩き出すことは確かに気分が良いかもしれません。
しかし何故自分が誰よりも高い数値を叩き出せているのか?に思いを寄せて欲しいものです。
「タンクがタゲを受け持ってくれているから」
これではまだまだ発想として弱い。
他のメンバーは「タゲを集める」「仲間を治癒する」「バフやデバフで援護する」など、PT全体のことを考え、あえて自分の攻撃力を犠牲にしているのだということに気付いて下さい。
つまり、「貴方が強いのではなく、他のメンバーが攻撃力を抑えているだけのこと」であること。
魚屋が八百屋に魚知識で勝負を挑むことなど、愚かでしかないわけです。
■アタッカーの資質
アタッカーに必要な資質、プレイヤー(中の人)について触れておきます。
どのポジションでもプレイヤーの資質は重要ですが、このアタッカーほどプレイヤーの資質を軽んじられているポジションもないでしょう。
俗に「俺TUEEEEEEEEEE!厨」などと揶揄されるのもこういった所にあり、その為に本当のアタッカーまで同様に見られてしまうのは悲しいことです。
1)知的センス
火力に溺れ、火力が高いことを安易に誇ってしまう人が多いポジションであることも事実なのですが、真のアタッカーは正に知的なポジションなのです。
タンクはタゲを保持し続ける必要性から、その場を動けません。
魔法使いは詠唱中移動はおろか、チャットも出来ません。
いつどのタイミングでも自由に動きまわれるのは正にアタッカーであり、アタッカーこそ「臨機応変さ」が最も求められるポジションなのです。
MOBのタゲが移ったら、少しの間攻撃を止めてタンクにタゲが移るのを待つ。
「もし後衛にMOBが行ったら私が救援に向かう」と事前にタンクに進言しておく。
常にPT全体を見渡し、危険がないか目を配る。
迅速なヒールを期待せず、最悪に備えてヒールポーションやステルスポーションを用意しておく。
などなど、アタッカーに必要な要素は全て知性が必要なのです。
2)器用さ
上記でアタッカーには臨機応変さが必要だと説明しましたが、それを実行するには器用さが不可欠です。
後衛の救援に走り上手くタゲを奪った後、再びタンクのところまで誘導したとして、そのタゲをタンクに渡すにはどうしたら良いでしょう?
「早く取って」とボーっと突っ立っているだけでは芸がありません。
上手く自分とMOBの間にタンクが挟まるよう、位置を調整したり、場合によってはステポや隠遁を使うことも必要です。
上の図で説明したCの位置に陣取ったなら、後衛の救援に向かうには、走行ルートも大切になります。
攻撃を受けてHPが減ったなら、ヒールを受けやすい位置に移動し、ヒールしてくれよとアピールすることも大切ですね。
このように、アタッカーは起用さが大切なポジションなのです。
3)真っ先に死ぬ覚悟
PTにおいて最も最悪な結末は全滅であり、これは誰もが分かっていることです。
では、全滅への筋書きというのは、どういうものでしょうか?
「タゲがハネまくり、後衛などが死んでしまう」「ヒーラーが死亡し、治癒する者がおらずジリ貧状態で力尽きる」「蘇生出来る人が死んでしまい、復活出来ない」色々ありますね。
これら最悪のシナリオを考えてみれが、蘇生担当、ヒーラー、タンクの順に「死んではいけないリスト」が作れるのは明らかです。
つまり、彼らが危機に瀕している時、アタッカーは真っ先に自分が代わって死亡するリスクを負わなければなりません。
狩りの本質はMOBのHPを削ることなのですが、PTの本質は生存することであり、この相反したところにPT戦というものがあり、この2つを繋ぐ役割りこそがアタッカーであり、狩りの本質としてHPを削りまくり、PT生存のため重要なポジションを助けるという、双肩に攻撃と防御を合わせ持った存在なのです。
■最後に
いかがだったでしょうか?
「なるほど、簡単に考えていたけど、アタッカーってやること多いし、責任重大で、なかなか深いものだな」と感じられた方も少なくないのではないでしょうか?
しかし今回書いたことはアタッカーの一部であり、まだまだ書き足りていないのですが、全てを書くにはスペース的に不可能です。
次回は「遊撃について考える」と題して、我がギルド特有のポジション「遊撃」について論じたいと思いますが、この遊撃とは「上位アタッカー」「アタッカーリーダー」という意味に近く、アタッカーを志す人に有意義な内容だと思いますので、アタッカーについての続編として読んで頂ければ幸いです。
最後に先日面白い場面に遭遇したので、それを紹介して終わりたいと思います。
先日よりデモニカが常時湧いているようになり、我々もプラーナへデモニカ討伐に出かけた時のことです。
私はヒーラーとしてヒールをしたり、盾魔法や鎧魔法などをかけたりしながら、死亡した人の蘇生を行ったりしておりました。
その私の前方で、コルクとアズがデモニカに対して奮闘しております。
ちなみにコルクとアズは、斧と格闘という攻撃手段は違うものの、回避型タイプであり、それほど大きな違いがあるわけではありません。
しかし二人の行動は面白いほど違うのです。
基本的にコルクは、殴られてHPが点滅状態になろうがお構いなしという感じで死ぬまで殴り続けており、蘇生後ヒールで回復されたら、それが70%程度の回復でも再び突入していきます。
これは「残りの二発めのヒールは突っ込んで行く最中にかけてくれるでしょ」という読みであったり、「70%も100%も、結果として大差ない」という考えだったりするわけです。
アズの方はというと、デモニカにポカリと殴られてHPが30%くらいになってしまうと、そそくさと私の真横まで寄ってきて、じっと立っています。
ヒールで100%に戻してやっても動かず、盾魔法をかけてやると、再びデモニカに突入して行きます。
これは「一撃で死なないため」ということなのですが、その裏には、「戦闘中の追加ヒールやバフを期待していない」ということでもあり、その考え方がいつものクセとして出たのかもしれません。
現在二人とも回避型ではありますが、コルクは元来タンクであり、アズはアタッカー、しかも最もヒール優先度の低い遊撃担当であり、二人のポジションによる考え方の違いが如実に出ているなぁと、二人を眺めながらクスクスと笑ってしまった私でした。
更に書くならば、コルクの「必要な魔法は後からかけてくれるでしょ」というのも、アズの「ヒールくれ、盾くれ」というのも、共に言葉(チャット)にしていないという事実に注目して欲しいと思います。
コルクは中途半端な回復状況で突っ込んでいくことで、アズは黙って私の横に立ち続けることで、暗黙の内に私に対して「こうしろよ」とメッセージを送っているわけです。
何も言わなくても理解する私がスゴイ!ってことではありません。
それは何度もやってれば、誰でも分かることなので、特別大したことでもないのです。
コルクもアズも、それぞれタンクとして、アタッカーとして、誇りを持って真剣に考え常に行動しており、過去のPTでの行動で戦闘中どうするべきかということを示してきているのです。
そういう過去の経験の積み重ねが、私と二人との間に、例に挙げたような「行動で意思を示す」という阿吽の呼吸を生んでいるということ。
「黙っていてもナルさんならヒールするだろう」「盾をかけてくるだろう」という信頼を持つに至っていること。
これこそが、自分のポジションを真剣に考え、実際に行動し、それを地道に積み重ねていくことで実績を作り、メンバーとの信頼関係を築くまでに至ることが出来ているということです。
私がこのPT論で論じている「改めて真剣に考えてみよう」というのは、単に自分が上手になるだけでなく、仲間との信頼関係を築く上でも重要なことであるという明確な実証事例だと思いました。